インタビュー

ゲームサイド 2008年10月号(2008年09月03日発売号)

稼動記念イベント会場にて行われたインタビューより
****以下引用・写真省略****
『まもるクン』を取材してしまった!グレフ×ガルチ インタビュー
 グレフ 丸山博幸
 ガルチ 茶谷 修
 ガルチ 斎藤貴幸
 Interviewer 箭本進一
 ※撮影協力:新宿ゲーセン・ミカド

--今回は任意スクロールという今のシューティング界ではちょっと珍しい形式ですよね。
丸山氏(以下、丸) 逆にこういうゲームがないというのも問題かなあと。シューティングといえば、強制スクロールで機体が選べて、細いショットとワイドショットがあって……というようにテンプレートがある。それは悪いことでは決してないんだけれど、そちらに偏りすぎている。昔はもっといろいろなゲームがあって、今はジャンルの多彩さが不足していますよね。
--アクション性のあるシューティングがなくなってしまうという危機感があった?
丸 滅びたとは思いませんが、ここ数年のアーケードにはなかったので、新作を作るうえでの選択肢のひとつにはなりました。で、ガルチさんへ提案しまして、共感していただいた。
--キャラクターを前面に押し出した『まもるクン』ですが、キャラクターとシステムのどちらが先に存在したものなんですか?
丸 システムが先でキャラクターが後です。キャラクターを乗せるためのシステムを作りました。キャラクターを押し出す形でのシューティングであるということは決まっていました。キャラクター像に関しては専門家であるデザイナーの方へお任せしました。
--今後のシューティングにはキャラクターは必要不可欠なものと思われますか?
茶谷氏(以下、茶) 最初にシューティングを作りたい、とグレフさんに相談した時、これからは若い人にもやってもらえるようなシューティングを作ってみたいと相談もしてたんですよ。単にキャラクターが乗っているだけでなく、生き生きと動いているシューティングを。そうしたやり取りの中で、すごく自然な形で現在のような形となりました。
丸 グレフの過去の反省として「キャラクターを後付けするのはきつい」というのがありました。『ボーダーダウン』はキャラクターを後付けした物語です。そう感じさせないために工夫はしたんですけれど。自分はどちらかというとキャラクター性のあるゲームをやってこなかったんですが、だからこそ後付けでキャラクターを乗せることに抵抗感がある。キャラクターを乗せるのであれば、最初からそのつもりでやって、ちゃんとキャラクターに命を吹き込んであげないと軽いものになってしまう。『ボーダーダウン』からそのことを学びました。今回は最初、メカ系のシューティングを作ろうかと思ってたんですけど、新しいことにチャレンジしたいという考えがグレフとガルチさんで一致したんです。
--キャラクターありきであったと。
茶 飛行機と戦車以外のもの……ということですね。もうちょっと楽しげな。社内では飛行機と戦車が弾を吐くのがシューティングであるという意見のほうが多かったんですよ。ただ、そうするとコアなプレイヤーさんしか遊ばないものになる不安がありましたので、やるのならばちゃんとやりたいと。誰にやってもらいたいか、自分たちが何を作りたいのかということを考え直そうと。そういう辺りも含めてグレフさんにご協力いただきました。
--では『まもるクン』は誰に遊んでもらいたいタイトルなんでしょうか。
丸 10代後半~20代後半。ゲームはやるんだけれど、あまりシューティングをやっていない、強烈過ぎる弾幕シューティングを見て「これは自分にはできない」と思っている人ですね。こうした層を拾い上げるゲームがない。
--デモンストレーションがマンガ風ですね。
丸 あのアイデアはデザイナーから出たものです。マンガ風の解説を作ってそれを雑誌に載せたいというのは以前からあったのですが、アトラクトデモ(※1)に昇華しました。
--イベントでもコアなシューターの人と『旋光の輪舞』ファンの人が多かったですね。
丸 死活問題として、若い世代が育っていかないとどうしようもない。もちろん若い世代の中にもシューティングセンスがあって今のシューティングにもすぐに順応できる人はいるんですが、それは選ばれし人なんです。そういう人の受け皿しかないというのはまずい。昔はもっといろいろなゲームがあったんですが、今はそうではないので、何とかしたいという思いはありました。
--音楽の安井さん(※2)や若いスタッフの起用もそこに絡んでくるわけですか?
丸 そうですね。若い世代を活性化したいと。そのおかげかデザイナーからの意見が多かったですね。「生き物の敵キャラを作りたい」というのも、デザイナーからの意見でした。
斎藤氏(以下、斎) シューティング=戦闘機という見方をしているわけではなかったですね。シューティングというジャンルが衰退してきていると言われて10年くらいたちますが「でも、残ってるじゃん」というのと同時に、先細りであるというのも気付いていると思うんです。でも作れないという葛藤がある。思い切ってここらで現状を変えるようなものを作ってみたい、というのはガルチの全員が思っていたんですよ。そこをグレフさんに持っていったら、うまく受けていただいた。
丸 面白そうなことに飛びつくのはウチの会社のルールですから。
--シューティングというジャンルそのものへの危機感というのはあった?
斎 それはかなりありました。私は前にセイブ開発(※3)にいたんですよ。そこはシューティングしか作っていないような会社だったんです。シューティングか麻雀か、みたいな。96年くらいからシューティングが売れなくなってきたという時期がありまして、その頃から危機感を持っていました。その頃と比較しても、現在はゲームの遊び方が一種類しかないような状況になってきています。
--「一種類の遊び方」とは?
斎 「弾幕を避けるゲーム」ですね。本来シューティングにはいろいろなバリエーションがあった。彩京さん(※4)のような速い弾を撃ってくるスタイルや複雑な地形を避けなければならないスタイルなど特徴のあるものが多かったですね。弾幕シューティングを歓迎する声が大きすぎて少数派の声が聞こえてこないのかな、とは思います。
--市場を牽引してきた弾幕の魅力というのはどういったものだと考えられますか?
丸 弾を避けるときのゾクっとする感覚でしょうね。快感自体は『スターフォース』(※5)の時から存在していたんですが、それを純化する動きが『V・Ⅴ』(※6)あたりから始まって『バトルガレッガ』(※7)や『怒首領蜂』(※8)で一気にブレイクした。弾幕を避けることが気持ちいいだけでなくて、それがギャラリー受けする。そこも含めての気持ちよさではないかと。『まもるクン』はよく『奇々怪界』(※9)ですかと言われるんですけれど、『ワルキューレの伝説』(※10)のような80年代ナムコゲームのイメージなんですよね。ナムコのシューティングって、自由な発想で作られてると思うんです。シューティングの文法にのっとらないからこその自由な雰囲気。「シューティングはこういうものだ」という定義の中で作っているのではなく世界観を表現するためのシューティングというか。その自由な雰囲気を大切にしたかったので、『まもるクン』もシューティングの定義にのっとった作りにはしていないですね。ボムもない(※11)。ただ、アイテムの回収とか弾の出方とかそういう要素は今風になってます。今のものだからといって完全に拒否するのではなく、うまく融合させる。いろいろな要素を今風にしつつ、自由な発想で作ったのが『まもるクン』です。
--その結果として生き物の敵キャラがいるわけですが、開発時の苦労はありましたか。
斎 手間がかかりました。まもる君たちが飛ぶのか、歩くのかというところでも相当に時間がかかりました。最初は体を動かさずに浮遊してたんです。それでもいいかなと思ってたんですが、最初にAOUショーに出した時に、ユーザーさんから「体が固まってるのはおかしい」というご意見が多かったんですよ。やっぱり言われたという感じではありました。そこで前進モーションを導入して、ロケテストを行ったんですが、そうするとプレイヤーだけではなくて、敵キャラにもモーションを付けなければならなくなったんです。メカの場合だと飛んでいるだけで格好が付いたんですが、生物だとそうはいきません。細かい動きなんかも付けていくと相当な手間になりました。ただ、苦労したかいはあって、見ていて楽しい画面になりましたね。
--さまざまな工夫や試行錯誤のかいあって、コアユーザー以外も取り込めそうな『まもるクン』になっていますね。
丸 本来ゲームセンターってゲームのおもちゃ箱みたいなところがあったんですが、そうじゃなくなってるところが寂しいですね。『まもるクン』も長く付き合ってもらえれば、いろいろなやり方が見えてくるようになってますよ。
--そうしたやり方に関してはどういった手段で周知される予定ですか?
丸 動画配信を予定しています。昔のゲームセンターで、ギャラリーとして人のプレイを見るような感じですね。『ボーダーダウン』のドリームキャスト版でそうしたモードを入れてみた(※12)んですが、評判が良かったんですよ。昔はギャラリーして、並びながら学習していくというところがありましたよね。並んでる人で協力して攻略するみたいな。そうした良さを再現できたらいいですね。
茶 『まもるクン』では柔軟性が持たせてあって、ちょっと違った遊び方ができたりするようになっています。ぜひ、そうした部分も探していただければと思います。
斎 ステージ中にはルート選択もありますし。
--では『まもるクン』で最初のステージをクリアするアドバイスを読者にお願いします。
丸 任意スクロールなんで、自分のペースで前進できるんですよ。敵の攻撃が激しいときはその場に止まって落ち着いて。怖いと思ったら前へ進まない。タイムオーバーを恐れることなく遊んでください。逆にタイムオーバーで死ぬことを目標にする。タイムオーバーで死ぬということは恥ずかしいことじゃなくて、そこから記録を伸ばしていけばいいってことなので。そうするとすごくまったりプレイできます。レースゲームなんかでも、最初はゴールに行けないにしても決められた時間は遊ぶことができるじゃないですか。『まもるクン』は最低5分は遊べます。慌てず騒がずゲームを楽しみましょうってことですね。
茶 どのステージにも絶妙な場所にライフが配置されてます。それをアテにしてください。
丸 タイム制限はアーケードの興行的な理由で付いているようなものですが、アイテムを取ったり敵を倒すことでどんどん増えます。
--では、家庭用に移植するとしたなら、タイム制限がなくなる可能性もある?
丸 家庭用なら、そういうモードがあってもいいんじゃないかと思いますね。さすがにランキングには反映されないでしょうけど。
--初心者にお薦めのキャラは誰ですか?
斎 まもるかキンヤですね。
丸 初心者キャラ2人、上級者キャラ2人という構成だったんですが、男が初心者向けで女の子が上級者向けになったのは偶然です。
茶 丸山社長が一番好きなキャラって誰?
丸 僕が一番好きなキャラ……難しいなあ。う~ん……「本当はここまでやりたかったバージョン」が存在するってところでマユノかもしれない。マユノは当初、ウチのゲームっぽく悲劇的な要素とちょっと考えてほしいっていう部分を入れてたんですよ。前の世界では病気で苦しんでたので帰りたくないという設定だったり、社会問題的なところだったり。「またグレフか」と言われるようなカラーだったんですけれど、でもそれは『まもるクン』の世界としてはどうなんだろうって思って変えたんです。『まもるクン』はエンターテイメントとして終わって欲しかったので。そういう意味ではキャラクター設定に関して一番考えましたね。ほかのキャラたちはストレートに出てきたんですけれど。
--いろいろな意味での新境地であると。
丸 せっかく二つの会社が集まるんだから、今までにないものを作りたいなと。グレフらしさを追求してるわけではないし、ガルチさんらしさを出しているわけでもない。
--では、機会があれば再びコラボレーションしてみたいですか?
丸 ガルチさんがよければ、ぜひ。
茶 こちらもぜひとも。
丸 シューティングにこだわらなくてもいいのかもしれないね。
茶 ガルチも別にシューティングだけ作る会社ではないですしね。
丸 どっちの会社もリアルタイムなゲームが好きな人間が集まってますから。


※脚注
(※1)アトラクトデモ:集客デモ。ゲームをしていない状態で流れる。
(※2)音楽の安井さん:有限会社スーパースィープの安井洋介氏。
(※3)セイブ開発:ゲームメーカー。『雷電』など縦スクロールシューティングを得意とする。
(※4)彩京さん:ゲームメーカー。高速の弾が飛ぶパターン化必須のスタイル「彩京弾」という造語を産んだ。
(※5)『スターフォース』:1984年の縦スクロールシューティング。高速弾が飛んでくるというスリリングな弾避け。
(※6)『V・Ⅴ』:ヴイ・ファイヴ。1993年の縦スクロールシューティング。『グラディウス』風の特殊なパワーアップシステムを持つ。
(※7)『バトルガレッガ』:1996年の縦スクロールシューティング。意図的にミスすることで難度を下げるという緻密なプレイを追及。カリスマ的な人気を誇る。
(※8)『怒首領蜂』:どどんぱち。1997年の縦スクロールシューティング。大量の敵弾の間を抜ける「弾幕もの」というジャンルを確立させる。
(※9)『奇々怪界』:1986年のアクションゲーム。シューティング風だが、自分でレバーを入れている間だけ面が進行する。
(※10)『ワルキューレの伝説』:1989年のアクションゲーム。任意スクロールのマップを冒険する。買い物や隠されたアイテムなどRPGを意識した内容。
(※11)ボムもない:シューティングには、敵弾が消える緊急回避の「ボム」が回数制限付きで用意されるのがお約束。『まもるクン』では「呪い弾」が近い機能を持つが、使用回数無制限。
(※12)そうしたモードを入れてみた:開発者によるさまざまなサンプルプレイを見ることができる。
****以上引用ここまで****

Last update on 2013-10-28 (月) 11:31:02 (1422d) | 差分 | バックアップ